これまでの記事で、
SEOの基本
サイト構造
コンテンツの可読性
アクセシビリティ
表示速度
といったデザイン段階で貢献できるSEO対策のポイントについて解説してきました。
最終回となる今回は、検索エンジンとのコミュニケーションを深める「構造化データマークアップ」や、SEO戦略の基礎となる「キーワード選定の考え方」、そしてこれらのSEOの知識のデザインプロセスへの組み込み方や、クライアントに価値提供方法という実践的な側面について解説していきます。
これらの知識を身につけることによって、単なる「見た目を作るだけのデザイナー」から、「成果を生み出せるデザイナー」へとステップアップできるはずです。
構造化データマークアップの基礎知識
「構造化データ」と聞くと難しそうですが、基本的な概念はシンプルです。構造化データとは、Webページの内容(例:この記事が「ブログ記事」であること、この商品が「特定の商品」であること、この会社が「特定の組織」であることなど)が「何か」を、検索エンジンがより深く、正確に理解できるようにするための特別な情報(マークアップ)のことです。
構造化データを実装するメリット
構造化データを適切にWebサイトに実装することにより、検索結果ページで通常よりも多くの情報や魅力的な形式で表示される「リッチリザルト」として表示される可能性が高まります。
リッチリザルトとは?
リッチリザルトとは通常の検索結果よりもさらに多くの情報が表示された検索結果ページのことをいいます。
- リッチリザルトの例
- 商品レビューの星評価や価格帯
- レシピの調理時間、カロリー
- FAQページの質問と回答の展開表示
- イベントの日時、場所
- パンくずリストの表示
- 企業のロゴや連絡先情報
- リッチリザルトの効果
検索結果で自サイトの表示が他のサイトよりも目立ちやすくなることで、ユーザーの目に留まりやすくなり、クリック率(CTR)の向上が期待できます。結果として、サイトへのトラフィック増加の可能性があります。
デザイナーとしてできること
構造化データの記述は、エンジニアやコーダーによって行われることが多いです。ですが、デザイナーも以下の点を意識することで、より効果的な構造化データの実装に貢献可能です。
- 構造化データの対象になる情報を知っておく
Googleの公式ドキュメント(Google Search Centralなど)を参照し、どのような種類のコンテンツが構造化データに対応しており、どのようなリッチリザルトが表示される可能性があるのか把握しておくことも大事です。
例えば、「記事」「商品」「レシピ」「イベント」「FAQ」「パンくずリスト」「ローカルビジネス」などがあります。 - デザイン段階で必要な情報をコンテンツに含むことを意識する
構造化データとしてマークアップするためには、その元となる情報がページ上に存在していなければなりません。デザイナーは、リッチリザルトで表示させたい情報を把握して、それが自然な形でコンテンツ内に含まれるようにデザインを計画する必要があります。
例:商品のレビュー評価をリッチリザルトで表示したい
➡Webサイト上にレビュー投稿機能やユーザーによる評価の星を表示するデザインを組み込みます。そして、その情報を構造化データとしてマークアップできるようにします。
例:FAQページをリッチリザルトで表示させたい
➡質問と回答のペアが明確に分かるような構成にしてデザイン設計をします。 - エンジニアへの情報提供と連携
デザインカンプを作成する際や、エンジニアにデザインを引き渡す際に、どの情報が構造化データの対象となり得るか、どのようなリッチリザルト表示を期待しているかを伝えることにより、スムーズに実装することが可能です。
必要な情報が不足していた場合は、エンジニアからフィードバックをもらい、デザイン修正が発生する可能性もあります。
デザイナー視点によるキーワード選定の基本的な考え方
キーワード選定はSEO戦略の根幹ともいえます。通常はSEOの専門家、コンテンツマーケター、あるいはクライアント自身が中心となって行うことが多いでしょう。しかし、デザイナーもその基本的な考え方を理解しておくことにより、より効果的なデザインを生み出すことが可能です。
キーワードがなぜ重要か?
キーワードとは、ユーザーが情報を探す際に検索エンジンに入力する単語やフレーズのことをいいます。
ユーザーがどのようなキーワードで検索し、その検索の背景にある目的や疑問(検索意図)を深く理解し、それに応える質の高いコンテンツをサイト内に用意することがSEOの基本です。
デザイナー側からできること
直接的なキーワード選定ツールの使用や詳細な競合分析などは専門家の領域ですが、デザイナーも以下のような方法キーワード戦略に貢献できるでしょう。
- クライアントのビジネスとターゲットユーザーを深く理解する
これはデザインの前提としても不可欠ですが、SEOの観点からも同様に大切です。
クライアントのビジネス形態や、どのような製品やサービスを提供しているか、どのような悩みやニーズを持つユーザーがターゲットなのかを理解することにより、関連性の高いキーワード群やユーザーが検索で使いそうな言葉遣いがイメージしやすくなります。 - 情報共有と意識のすり合わせを行う
クライアントやSEO担当者がどのようなキーワード戦略を立てているのか、サイトの各ページがどのような検索意図を持つユーザーに向けられているのかを積極的にキャッチアップしましょう。
クライアントの目的を叶えるために戦略をデザインに反映させる意識を持つことが大事です。 - コンテンツとキーワードの整合性をデザインでバランスをとる
デザインするページの内容が、想定されるキーワードや検索意図とかけ離れていないか、デザイナーの視点からチェックすることも大事です。
例えば、特定のキーワードで上位表示を狙っているページなのに、そのキーワードに関連する重要な情報がデザイン上目立たない場所に配置されていたり、情報量が不足しているなど、ユーザーにとって見つけにくい場合は、改善点を提案できます。 - 見出しや主要なテキストへ自然なキーワードを組み込む(SEOライティングへの配慮)
SEOライティングは専門的なスキルですが、デザイナーも見出し(特に<h1>
タグや<h2>
タグ)、キャッチコピー、リード文に、ターゲットキーワードが効果的に含まれるようにサポートが可能です。具体的にはテキストの配置や文字を強調する、視覚的な優先順位をつけて目立たせる等です。キーワードの詰め込みすぎは逆効果となるので注意が必要です。
SEOを意識したデザインプロセスとクライアントへの提案
SEO対策は、デザインプロセスの初期段階から意識して取り組む方がはるかに効果的であり、作業も少なく済みます。
- デザイン初期段階のSEO意識
クライアントへのヒアリングや要件定義の段階からSEOに関する話題を出していきましょう。さらにワイヤーフレームやサイトマップを作成する段階では、サイト全体の構造、主要なページのテーマ、見出し構成(Hタグの階層)、主要キーワードの配置などもSEOの観点の含めて検討することが大事です。 - SEO担当者やエンジニアとの連携
もしプロジェクトチーム内にSEO担当者やエンジニアがいる場合は、企画・設計の早い段階から積極的にコミュニケーションを取り、専門的なアドバイスや要望をデザインに取り入れていきましょう。
デザイナー、エンジニア、SEO担当者が連携してサイト制作に取り組むことが理想です。 - クライアントへの説明とメリット提示
SEOを意識したデザインが必要な理由や、クライアントのビジネスにどのようなメリット(例:ターゲット顧客へのリーチ拡大、見込み客の獲得、問い合わせ増加、ブランド認知向上など)が期待できるのか説明しましょう。専門用語をできるだけ避け、分かりやすい言葉で説明することで理解と協力を得やすくなります。
「なんとなく良さそう」ではなく、「△△な理由で○○の効果が期待できる」と具体的に伝えることで説得力が増します。 - 「デザイン性」と「SEO」のバランス
SEOを意識しすぎて、デザイン性が著しく損なわれたり、ユーザー体験が悪化しては本末転倒です。
SEOの要件を満たしながら、魅力的で使いやすくブランドイメージを体現するデザインを実現する、といったように、両者の最適なバランスを意識しましょう。
時には、SEOの専門家とデザイナーの間で、どちらを優先すべきか議論が必要なこともあります。
その際は、最終的に「ユーザーにとって何が最善か」という視点に立ち返ることが非常に重要です。
まとめ:SEOフレンドリーなデザイン=クライアント&ユーザーへの価値提供になる
現在は、WebデザイナーもSEOの基本を理解し、日々のデザインプロセスにその視点を組み込むことが求められる時代です。
この記事で紹介したことは、決して特別なことではありません。
デザイナーならではの細やかな配慮や工夫の積み重ねがクライアントのWebサイトの検索順位や集客力において大きな影響を与える可能性があります。
SEOを意識したデザインは、検索エンジンに評価されるためだけのものではありません。
ユーザーが求める情報にスムーズにたどり着けるようにサポートし、より快適で価値のあるWeb体験を提供することに繋がります。
その結果として、クライアントのビジネス成長に貢献することができ、デザイナーとしての評価と信頼を高めることにも繋がるでしょう。
「ユーザーファースト」の視点で
価値ある情報を見つけやすく
魅力的に提供する
これこそが、SEOフレンドリーなデザインの本質であり、クライアントとユーザー双方に価値提供できるWebデザイナーへの道となるはずです。ぜひあなたのデザインで、Webの世界をより良くしていってくださいね!